選択迫られる政策姿勢       (97.6)

 

 小笠原村を恒例の視察に訪れていた井奥貞雄・国土庁政務次官が、帰京の直前、見送りにきていた佐々木幸美村議会議長(当時)を手招きし、何事かを耳打ちした。その様子を、当選を果たしたばかりの宮沢昭一村長が離れていた場所から眺めていた――。六月二十四日父島の海上自衛隊分遣隊ヘリポート。

 話の内容は、特筆するほどのものではなかったようだ。只、この光景に、小笠原村の新体制と国との”“距離感”が象徴されている。「日本共産党が単独与党の自治体首長は、東京では狛江市、足立区についで三人目」

 共産党機関紙『赤旗』は、村長選の結果について、こう報じた(六月二日付)。その後の報道でも、「住民参加の村政誕生」「力を合わせた保守、無党派の人々と日本共産党」などと、新宮沢昭一村長への並々ならぬ期待を強調している(同二十九日付)。

 宮沢村長の支持母体はこの共産党と、自然志向派、や「明るい小笠原を作る会」、それと、かって森下一男氏を擁立していた保守勢力の連合体だった。後者には“極右”を自称する幹部もいる。東西冷戦時代なら考えられなかった、左右両陣営の“共闘”で誕生した宮沢村長の立場は極めて微妙である。

 国や東京都が新村長に距離を置こうとするのはこのためだ。都議会関係者が打ち明ける。「小笠原関係の政策、特に空港問題に関しては、自民・公明党主導の下、各党の協力で進めてきた経緯があります。共産党の推す首長ということになると、非常に違和感がありますね。対応が変わってくる可能性もなきにしもあらずです」

 露骨に不快感を示す保守系の国会議員も少なくない。空港建設に尽力してきた都議の一人は「新村長には敷居をまたがせない」とまで言い切ったと、伝えられる。

 「村長が誰になろうと、都は行政として、村のために努力していくだけ」と、押切重洋総務局地域振興担当部長はキッパリ。とはいうものの、政治とは所詮、人間のやるものだ。今後の小笠原村に、現実の権力から報復の刃が向けられない保証はない。

 空港関連だけでなく、来年に迫った小笠原諸島振興措置法の延長問題への影響を心配する関係者も多い。 こうした空気を察知したのか、当の宮沢村長は先月二十三日に開かれた議会定例会の初日、所信表明演説で、「安藤村政の継承」を打ち出した。共産党の選挙協力は「支持は受けたが、政策実行は別問題」とする発言もあった。

 共産党を切り捨てて、では、新村長が保守層を抑えて国や都、都議会与党の抱く小笠原村への距離感を縮められるかというと、そう単純ではない。

 今回の都議選中でも、島しょ部を選挙区とする川島忠一都議(自民党公認)の小笠原事務所が大村の至近距離に二つ作られた。村内の保守層が真っぷたつに割れている実態があからさまに示されるエピソートだった。

 もとより変化を望んだ有権者を裏切ることがあってもならない。宮沢新村長は、このジレンマをどう克服していくのか。苦渋の選択を迫られているともいえそうだ。 

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